お金のことを曖昧にしたがる出版業界
出版業界は、驚くほどお金に関してなあなあ、曖昧です。
依頼時にギャラが提示されない。制作過程で、先方の都合でギャラが値下げされる。支払日に入金されない。ついには入金されなかった。
私はフリー歴5年目のペーペーでまだ経験不足の編集•ライターですが、これらは全部経験済みです(泣)。
今日は「依頼時にギャラが定時されない」件について深掘りしていきます。先日、出版業界のギャラについて、作家の川上未映子さんが素晴らしいツイートをして話題をよびました。以下引用です。
未映子姉さんかっこいい! さすがです。と同時に文芸の分野も同じなんだと失望してしまいましたが。。。
私が身を置いている実用のジャンルも同じ。実用だと枚数で仕事をすることはないのですが、依頼メールには依頼する仕事の内容のみ書かれており、料金と納期が明記されていないことがあります。
感覚としては、料金は8割方明記されていない。納期は6割方明記されていない。
仕事の内容だけざっくり説明されて「このお仕事お受けしていただけますか」と聞かれるのです。
これだと情報が足りません。仕事内容は理解できても、まず自分のスケジュール次第で稼働できるか決まるので判断できない。そして、好きで仕事をしていますが、生活のために仕事をしている側面もあるのだからお金は大事。お金は大事。本当にお金は大事なんだ(しつこい…)! 料金が分からずお仕事をおうけするのは危険でしょう。
だからご依頼メールに対して、「料金はおいくらかお聞きしていいでしょうか」「納期はいつになりますでしょうか」と返すことになります。
この手間、すごく無駄です。最初から「仕事内容•料金•納期」をご提示いただけたらどんなに円滑に進むことか。
私は5年目に入ってようやく依頼メールの時点で「仕事内容•料金•納期」を確認するようになりました。その3点セットが揃っていないと、先方とお会いしてミーティングはしません。
逆にいうと、最初の4年間は料金が分からなくても仕事をうけてしまうことが多々ありました。
「先方がお金のことに触れないってことは聞かないほうがいいってこと?」「聞いたら嫌われる?」などと勝手に空気を読み、見切り発車でプロジェクトスタート。
先方の「ざっくりした内容とミーティングしましょう」の発車合図を受けてミーティングに行くとどうなってしまうか。
料金が分からないのに、正式に受けるか決めていないのに、企画に関して自分のアイディアを出すことになります。最悪タダ働きになります。
企画が走り出してしまってドキドキしながら必死の思いで料金を聞いたところ、お値段が想定より低かったり結局お断りするなんてこともありました。
経験からいうと、料金について曖昧にする版元さんとは、その後、何かしらお金で揉めることが多いです。
それこそ、途中でギャラを下げますと言われたり、支払日が遅れたり…。
5年目にして、お金をなあなあにするお付き合いにメリットはないという結論にいたり、ご依頼時点で「仕事内容•料金•納期」をくっきりはっきりさせるようにしたのでした。ちなみに契約書は発行していません(他業界から見たらあり得ない話ですが、これも出版業界の悪しき慣習)。でも、絶対に「仕事内容•料金•納期」をメールの文面で残すようにしています。何かあったときにメールでも証明として使えるので。
ということで、私は今年から未映子式。
「いくらちゃん」扱いされるかもしれませんが、嫌われてもいい。ちゃんと提示してくださる版元さんと気持ちよくお仕事できればいい。
つくづく出版業界の常識は他業界の非常識だなぁと感じます。